読みの手順 — 候補手・強制手・中間手
強い人も、すべての手を読んではいません
「10手先まで読む」と聞くと、盤の上で指せるすべての手を10手ぶん数えているように思えます。しかし、それは誰もやっていません。
一つの局面で指せる手は、おおよそ30通りあります。両者が交互に指すことを考えると、10手先までのすべての手順は、30を10回かけた数になります。これは人間には数えられませんし、コンピュータでも現実的な時間では終わりません。このサイトのAIも、すべての手を読んでいるわけではありません。
実際にやっているのは、読む手を先に絞ることです。手順は決まっています。
- 候補手を三つだけ挙げる
- 強制手から順に読む
- 相手の最善の受けを想定する
- 読み終えた局面で、駒を数え直す
この四つを、一つの局面で実際にやってみます。
例題
手順1|候補手を三つ挙げる
盤を見て、目についた手を三つだけ書き出します。この局面では、次の三つが自然です。
- Re8+ / ルークを8段目に入れる王手
- Qxd5 / ナイトを取る手
- Qb7 / クイーンを7段目に出して圧力をかける手
三つで十分です。四つめを探し始めているときは、多くの場合、一つめの読みが浅いままになっています。
手順2|強制手から読む
読む順番は、相手の指せる手が少ないものからです。王手、取る手、相手が受けなければならない手の順に見ます。この三種類をまとめて強制手といいます。
まず Re8+ を読みます。王手なので、赤の指せる手はほとんどありません。しかし赤は Rxe8 と、d8 のルークで取り返せます。白はルークを一枚失うことになるので、この手は良くありません。ここで読みを打ち切り、次の候補手に移ります。成立しないと分かった手をあとから読み直さないことが、持ち時間の節約になります。
次に Qxd5 を読みます。9の価値のクイーンで3の価値のナイトを取る手なので、この手だけを見れば大きな損です。ただし取る手なので、強制手として読みます。
赤が Rxd5 と取り返した場合、d8 のルークは8段目の守りを離れます。そこで Re8# となり、詰みです。
赤が取り返さなかった場合は、白がナイトを一枚得たまま局面が続きます。
赤はどちらを選んでも損をするため、Qxd5 がこの局面の正解になります。
手順3|相手の最善の受けを想定する
ここで起きやすい間違いは、自分に都合のよい受けだけを読むことです。
上の例で「赤は Rxd5 と取り返してくるはずだ」としか読まなかった場合、赤がナイトを見捨てたときに戸惑うことになります。両方を読んでおけば、どちらでも困りません。
読みの最後には、相手の立場で局面をもう一度見てください。自分が相手であれば、どう受けるか。それが実際に指される手です。
手順4|読み終えた局面で数え直す
読み切った先の局面で、駒の数を確かめます。途中の展開が良く見えると、数手先で駒が一枚足りていないことを見落とすことがあります。
確かめるのは三つです。両者の駒の合計、自分の王が安全かどうか、そして相手が次に指せる手です。
中間手
読みの手順に慣れたら、次は中間手です。ツヴィッシェンツークともいいます。
相手に駒を取られたとき、通常は取り返します。中間手とは、その取り返しを一手あとまわしにして、あいだにもっと得な強制手を入れることをいいます。
これが成り立つのは、取り返す手が逃げないためです。相手の駒はそのマスに残り続けるので、先に王手を入れてから取り返しても、多くの場合は間に合います。そして王手を入れているあいだに、相手の駒の位置がこちらに都合よく変わることがあります。
覚えかたとしては、取り返そうとして手が動きかけたときに、一度止まることです。止まって、王手と取る手がほかにないかを確かめます。それだけで拾える駒が増えます。
静かな手
もう一つ、上のレベルで差がつくのが静かな手です。王手でも取る手でもないのに、相手が受けきれない手のことをいいます。
前の記事で扱ったギリシャの贈り物の三手目、Qh5 がこれにあたります。この手は王手ではありませんが、次に Qh7 が詰みになるため、相手は受けなければなりません。
読みが浅いうちは、王手ばかりを読みがちになります。王手は相手の手を減らすので読みやすく、そのぶん行き止まりも多くなります。王手が尽きたところで、一度「静かな手はないか」と確かめてください。
レベル9か10、もしくはEXで練習する
チェスのページを開き、強さを9か10、もしくはEXにしてください。
レベル9は12手先まで読み、手加減の幅は0.04ポーンぶんです。レベル10とEXには手加減がまったく入らず、必ず最善手を指してきます。
この範囲では、相手のミスで勝つことがありません。したがって、負けたときの原因はすべてこちら側にあります。読みの練習相手としては、この性質が役に立ちます。
勝てなくても構いません。一局のうちで、読みが一手足りなかった場面を一つ見つけられれば、その一局には意味があります。
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記事を読んだら、遊んでみる
強さは11段階。勝てる相手から始められます。
