守りを外す — ディフレクション・デコイ・オーバーロード

守りを外す — ディフレクション・デコイ・オーバーロード

型が通らないのは、守りが一枚あるためです

ここまでで、フォーク、ピン、ディスカバードアタック、詰みの形を扱いました。これらを覚えると、まず起きるのが「型は分かるのに決まらない」という状態です。

原因は、相手がそのマスを守っていることにあります。前の記事で、あるマスに利いている駒の枚数を両方の側について数える方法を説明しました。守っている枚数のほうが多ければ、そこへ踏み込んでも損をします。

上級者がやっているのは、新しい型を覚えることではありません。型を当てる前に、守っている駒を一枚外すことです。外しかたには三つの方法があります。

方法内容
除去守っている駒を、こちらから取ってしまう
そらし(ディフレクション)守っている駒に別の用事を作り、その場を離れさせる
働きすぎ(オーバーロード)一枚で二つ守っている駒を見つけ、片方を攻める

1. 除去

最も単純な方法です。守っている駒を取ってしまえば、守られていた駒は守られていない状態になります。

白のルークが e5 の赤のナイトを狙っています。しかし、c6 の赤のナイトが e5 に跳べるため、e5 は守られています。このまま Rxe5 と取ると Nxe5 と取り返され、白は5の価値の駒を渡して3の価値の駒を得ることになり、2の損になります。

1. Bxc6 e5 を守っている c6 のナイトを、先に取ります。

1… bxc6 b7 のポーンで取り返されます。ここまでは3の駒どうしの交換なので、損得はありません。

2. Rxe5 しかし e5 のナイトは、もう守られていません。ここでナイトを一枚得します。

この手順で重要なのは順番です。Rxe5 を先に指すと、ただの駒損になります。守りを外してから当てる、という順番でなければ成立しません。

2. 働きすぎ

一枚の駒が、二つの役目を同時に果たしている場合があります。そのような駒は、片方の役目を果たそうとすれば、もう片方を果たせなくなります。この状態を働きすぎ、またはオーバーロードといいます。

赤の d8 のルークは、二つの役目を持っています。一つは d5 のナイトを守ることです。d の列に途中の駒がないため、d5 まで利きが届いています。もう一つは8段目を守ることです。もし白のルークが e8 に入れば詰みになりますが、d8 のルークが e8 に利いているため、それを防いでいます。この二つを同時に果たすことはできません。

1. Qxd5 守られているナイトを、あえてクイーンで取ります。9の価値の駒と3の価値の駒の交換なので、この手だけを見れば大きな損です。

1… Rxd5 ルークで取り返します。しかしこの手によって、ルークは8段目の守りを離れました。

2. Re8# 白のルークが8段目に入って詰みです。f8 と h8 は白のルークの利き、f7、g7、h7 は赤自身のポーンでふさがっています。

赤は 1… Rxd5 と取り返さず、ナイトを見捨てることもできます。その場合は、白がナイトを一枚得るだけで終わります。どちらを選んでも赤が損をする、という状態です。

このことから、守り駒を見たときは枚数だけでなく、その駒が他に何を守っているかも確かめる必要があります。二つ以上あれば、そこが狙いどころです。

3. そらし

取ることのできない守り駒に対しては、その場を離れざるを得ない用事を作ります。

白のポーンが a7 まで進んでいます。次に a8 へ進めばクイーンに成ります。赤の a8 のルークは、それを止めながら、同時に8段目も守っています。ここでも一枚の駒が二つの役目を持っています。

1. Re8+ ルークを8段目に打ち込んで王手をかけます。赤の王は、f8 と h8 が白のルークの利き、前は自分のポーンでふさがれているため、動けません。

1… Rxe8 ルークで取るしかありません。これが唯一の合法手です。そして a8 が空きました。

2. a8=Q ポーンがクイーンに成ります。しかもこのクイーンは、8段目にいる赤のルークを狙っています。

白はルーク一枚(5)を渡して、クイーン(9)を作り、さらにルークも取り返します。渡した駒より、返ってくるものが大きくなっています。これが成立する犠牲の形です。

守りの外しかたを探す手順

実戦では、次の順に考えます。

  1. 当てたいマスを決めます。詰みのマスでも、取りたい駒のいるマスでも構いません。
  2. そのマスを守っている駒を、一枚ずつ書き出します。
  3. その駒が、他にどんな役目を持っているかを確かめます。二つ以上あれば働きすぎです。
  4. その駒を取れないか、追い払えないか、その場を離れざるを得なくできないかを考えます。
  5. 外したあとで、もう一度そのマスの枚数を数え直します。

五つめを飛ばすと、守りを外すために使った駒のぶん、こちらの攻め手も減っていることを見落とします。外したのに当たらない、という結果になりやすいところです。

レベル6から8で練習する

チェスのページを開き、強さを6から8にしてください。

レベル6は5手先まで読みます。図1の除去の手順は4手なので、仕掛ければ相手にも見えています。見えたうえで成立するかどうかを試す相手になります。

レベル8は9手先まで読み、手加減の幅は0.10ポーンぶんしかありません。ほとんど最善手を指してくるため、成立していない犠牲は確実に咎められます。

うまくいかなかったときは、読みがどこで一手足りなかったかを確かめてください。多くの場合、外したあとの数え直しを飛ばしています。

記事を読んだら、遊んでみる

強さは11段階。勝てる相手から始められます。

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